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すこやかな高齢期をめざして ~ワンポイントアドバイス~

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禁煙でフレイル予防

老化疫学研究部 Department of Epidemiology of Aging

喫煙や受動喫煙が、がんや呼吸器疾患などの病気と関わることはよく知られています。しかし、それらが高齢期のフレイル(要介護予備群(トピックスNo.27 フレイルに気をつけてこのリンクは別ウィンドウで開きますNo.28「フレイル」と心の健康このリンクは別ウィンドウで開きますを参照))の発症にどのように関連するかは、これまであまり検討されてきませんでした。

受動喫煙とは、喫煙者が吸っている煙だけではなくタバコから立ち昇る煙や喫煙者が吐き出す煙にも、ニコチンやタールはもちろん多くの有害物質が含まれています。本人は喫煙しなくても身の回りのたばこの煙を吸わされてしまうことを受動喫煙と言います。厚生労働省生活習慣病予防のための健康情報サイトより

そこで、NILS-LSA第3次調査に参加された方々のうち、65歳以上の540名(その時点でフレイルと判定された方々、その後の追跡調査に参加されなかった方々を除く)を対象として、第3次調査時点における自身の喫煙および受動喫煙の状況と、その後、約2年間隔で行われた第4次から第7次調査におけるフレイル発症との関連について検討しました。

喫煙状況として、自身の喫煙については現在喫煙している「喫煙群」と、喫煙歴がない、あるいは禁煙後である「非喫煙群」に分類しました。受動喫煙については、家庭や職場における喫煙者に接する頻度を問い、喫煙者と毎日あるいは時々接触している場合に「受動喫煙あり群」喫煙者と接触がない場合に「受動喫煙なし群」に分類しました。フレイルついては、フレイル・チェック(上記トピックスNo.27「フレイルに気をつけて」の表1参照)の基準を用いて、5つのチェック項目のうち3つ以上あてはまる場合をフレイルと判定しました。

その結果、喫煙群は非喫煙群と比べて、その後フレイルが発症するリスクが2.4倍であることが示されました()。さらに、喫煙群のみを対象として、受動喫煙の有無とその後のフレイル発症との関連について検討したところ、受動喫煙なし群と比べて、受動喫煙あり群でのフレイル発症のリスクは、9倍を上回ることが明らかになりました。

喫煙群と非喫煙群のそれぞれのフレイル発症のリスクの関連を示したオッズ比の図。非喫煙群に比べ、喫煙群の方が約2倍リスクが高いことを表している。
解析には一般化推定方程式を用い、年齢、性別、教育年数、婚姻状況、就労、身体活動量、抑うつ、疾患既往、残存歯数等を調整した。

図:喫煙とフレイル発症の関係

今回の結果から、喫煙がその後のフレイル発症のリスクとなることが示されました。さらに、自身の喫煙と受動喫煙が重複すると、フレイル発症のリスクがより高くなることがわかりました。喫煙者自身が吸うタバコの煙だけではなく、タバコの煙や喫煙者が吐く煙にも、ニコチンやタールなどの多くの有害物質が含まれています。自身に加えて身近な人のフレイル予防のためにも、皆で禁煙を心がけましょう。

 

自身に加えて身近な人のフレイル予防のためにも、皆で禁煙を心がけましょう

 

 

<コラム担当:西田 裕紀子>

*このコラムの一部は、以下の研究成果として発表しています*

Wei-Min Chu, Yukiko Nishita, Chikako Tange, Shu Zhang, Kanae Furuya, Hiroshi Shimokata, Meng-Chih Lee, Hidenori Arai, Rei Otsuka:
Effects of cigarette smoking and secondhand smoke exposure on physical frailty development among community-dwelling older adults in Japan: Evidence from a 10-year population-based cohort study.
Geriatr Gerontol Int. 2024 Mar; 24(S1): 142–149. doi: 10.1111/ggi.14708.

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