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中村昭範 脳機能診断研究室長が2019年度日本認知症学会学会賞を受賞しました

中村昭範 脳機能診断研究室長(脳機能画像診断開発部)は、この度2019年度日本認知症学会学会賞を受賞し、11月8日の第38回日本認知症学会学術集会において表彰されました。
 

受賞研究業績

「アルツハイマー病の早期診断に資するバイオマーカーの探索に関する研究」
 

業績内容

アルツハイマー病(AD)の根治療法を目指した疾患修飾薬の開発が苦戦するのに伴い、早期診断に資する低侵襲バイオマーカーの開発の重要性が高まっています。受賞者らは、島津製作所・田中耕一記念質量分析研究所と共同で、高精度に脳内アミロイドβ(Aβ)病理の有無を正確に捉えられる血液バイオマーカーの開発に成功しました[1, 4]。これは、免疫沈降(IP)と質量分析(MS)を組み合わせたIP-MS法によって血漿中の微量なAβ関連ペプチド(APP669-711, Aβ1-40, Aβ1-42)を測定し、それらの比を更に数学的に組み合わせたものをバイオマーカーとする(Composite biomarker)ことにより、PiB-PET検査で評価した脳内Aβ病変の有無を90%近い正診率で推定できるものです。この結果は当センターの探索データセットを、独立したオーストラリアのAIBLのデータセットで検証を行うことにより信頼性が確認されました。

また受賞者らは、脳磁図を用いて発症前アルツハイマー病の電気生理学的マーカーの探索にも取り組んできました。軽度認知障害(MCI)および認知機能正常高齢者を対象に閉眼安静時の脳磁図シグナルを記録して脳領域毎のパワースペクトラムを求め、PiB-PET, FDG-PET, structural MRI等の画像検査と組み合わせて解析を行ったところ、脳局所の脳磁図パワースペクトラムは、Aβ蓄積に伴う変化、AD病態の進行に伴う変化、ADに非特異的な変化に分離して評価でき、発症前ADの病態評価に有用であることを示しました[2]。更に、安静時脳磁図シグナルから、脳内ネットワークの機能的連結(Functional connectivity: FC)を詳細に解析したところ、Aβ陽性の認知機能正常高齢者では、Default mode network内のFCがAβ蓄積に伴って有意に変化しており、これは、FDG-PETやstructural MRIで捉えられるようなdown streamマーカーの動きがないような段階でも脳磁図で捉えられることを明らかにしました[3]。

これらの業績の科学的・社会的波及効果やメディアでの報道等

開発した血液バイオマーカーが実用化されれば、脳内Aβ病理を有する軽度認知障害や無症候段階の高齢者を効率的にスクリーニングすることができ、AD治療薬の開発に貢献することが期待されます。また、日常的な臨床診療の場面においても、血液バイオマーカーは認知症の鑑別診断に有用な情報を提供できる。更に将来的には高齢者検診にも応用し、予防医療の場面でも貢献することも期待されます(ただし、ADの効果的な治療法や発症遅延策が開発され、倫理的・社会的なコンセンサスも熟成されていく必要があります)。これらの応用により、認知症の研究や医療に劇的に貢献するものと期待されます。また、脳磁図も、ADのリスクを有する高齢者の検出に有用であり、また、薬物や非薬物(運動や生活習慣の改善等)の介入効果をモニターするのに役立つ可能性があります。

血液バイオマーカー研究に関するNature誌での発表[1]は科学的にも社会的にも非常にインパクトが大きく、国内のみならず海外のメディアやネットでも広く報道されました。論文の注目度の指標であるAltmetric scoreは受賞時点で1212であり、これは発表後の期間が同程度の全科学論文約35万中160位、Nature誌に限定しでも818論文中19位と、世界的にも非常に注目度が高い研究成果であることを示しています。

1) 主論文

  1. Nakamura A, Kaneko N, Villemagne VL, Kato T, Doecke J, Doré V, Fowler C, Li Q-X, Martins R, Rowe C, Tomita T, Matsuzaki K, Ishii K, Ishii K, Arahata Y, Iwamoto S, Ito K, Tanaka K, Masters CL, Yanagisawa K. High performance plasma amyloid-β biomarkers for alzheimer’s disease. Nature. 2018;554:249-254

2) 副論文

  1. Nakamura A, Cuesta P, Fernandez A, Arahata Y, Iwata K, Kuratsubo I, Bundo M, Hattori H, Sakurai T, Fukuda K, Washimi Y, Endo H, Takeda A, Diers K, Bajo R, Maestu F, Ito K, Kato T. Electromagnetic signatures of the preclinical and prodromal stages of alzheimer's disease. Brain. 2018;141:1470-1485

  2. Nakamura A, Cuesta P, Kato T, Arahata Y, Iwata K, Yamagishi M, Kuratsubo I, Kato K, Bundo M, Diers K, Fernandez A, Maestu F, Ito K. Early functional network alterations in asymptomatic elders at risk for Alzheimer's disease. Sci. Rep. 2017;7:6517

  3. Kaneko N, Nakamura A, Washimi Y, Kato T, Sakurai T, Arahata Y, Bundo M, Takeda A, Niida S, Ito K, Toba K, Tanaka K, Yanagisawa K. Novel plasma biomarker surrogating cerebral amyloid deposition. Proc. Jpn. Acad. Ser. B Phys. Biol. Sci. 2014;90:353-364

 学会賞賞状  学会賞盾

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