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バイオリソース研究室

お知らせ

ホームページを更新しました (2016.10)

三菱財団研究助成が決定しました(2016.10)

佐々木飛翔研究員が第89回日本生化学大会で研究成果の報告をしました(2016.9.26)

We created English web site (2015.3)

金成花研究員の論文が受理されました (2015.3)

研究所の花

研究内容

病理解剖組織バイオリソースの研究

 脳の病気の研究は認知症の原因となる疾患の中で、中枢神経に起こる神経変性疾患という病気を研究しています。神経変性疾患はヒトの脳に起こる病気で、症状が徐々に進行します。遺伝性の病気と遺伝ではないタイプと2種類あります。バイオリソース研究室(LoRRe)ではヒトの脳組織に関する研究、トランスジェニック動物に関する研究、培養細胞を使った研究、電気生理学的方法などさまざまな方法を使って患者さんに届く創薬研究を進めております。
 病理解剖組織バイオリソースとは、亡くなった患者さんの脳組織を保存して、神経変性疾患の研究目的に使用するものです。今日、ヒトの組織を用いた研究は倫理面や個人情報の管理の問題などさまざまな課題があり、困難な状況にあります。しかし、我々研究者にとってヒトの組織を直接研究する方法は、とても重要であると考えます。なぜならば、我々の研究は患者さんの治療を最終の目的にしているからです。疾患のモデル動物だけでは、患者さんの治療に応用できません。我々は真摯な態度で亡くなった患者さんと向き合い、ヒトの組織に関する研究を進めたいと考えています。

矢澤生

 

研究概要

 今日神経変性疾患に関する研究は目覚ましい進歩を遂げ、一部の遺伝性神経変性疾患では既に治療の開発段階にある病気もあります。しかし、治療のための研究の対象は培養細胞やトランスジェニックマウス等の動物モデルが大部分で、ヒトの病気の治療に応用するという点では多くの問題が残されています。例えば、遺伝性神経変性疾患の一つポリグルタミン病では大部分の疾患の神経細胞は発病時には核内に異常な封入体が出現することが示されましたが、核内封入体が神経細胞死の直接の誘導機序かどうかは依然として議論のあるところで、これを治療の指標にすることはできないと考えます。また、遺伝性ではない神経変性疾患の発病メカニズムに関する研究は遅れています。バイオリソース研究室では神経変性疾患の新しい治療の開発を目指して、いろいろな研究方法を用いて研究をする、若くて新しい研究室です。

疾患別

多系統萎縮症(MSA)

 α-Synucleinはパーキンソン病のLewy小体に含まれるが、アルツハイマー病やMSAでも異常蓄積を起こします。MSAでは、異常封入体は主にオリゴデンドロサイトに出現するGCI(glial cytoplasmic inclusion)です。Yazawaらはヒトα-synucleinをオリゴデンドロサイトに強制発現するトランスジェニック(TG)マウス(CNP-synTGマウス)を作成し、脳のオリゴデンドロサイトの変性と同時に、内因性マウスα-synucleinが前シナプスに封入体を形成し神経細胞及び軸索の変性を誘導することを報告しました(Yazawa et al, Neuron 2005)。この結果はオリゴデンドロサイトに起こった変性が、間接的にマウスα-synucleinにより神経細胞の変性をきたすことを示し、MSAの神経変性機序を考える上で重要であると考えます。Suzukiらはこの働きが変性オリゴデンドロサイトから分泌されるcystatin Cによることを明らかにしました(Suzuki et al, Am J Pathol 2014)。さらに、オリゴデンドロサイトと神経細胞には密接なネットワークがあることを示しました。バイオリソース研究室では、このMSAモデルマウスを使ってMSAに起こる神経変性のメカニズムを解析し、診断治療の開発をおこないます。

synuclein発現オリゴデンドロサイトによる神経細胞の変性

ポリグルタミン病

 バイオリソース研究室では、ポリグルタミン病の中で歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)という疾患を第一のターゲットの疾患とします。1990年台前半、多くのポリグルタミン病の原因遺伝子が明らかにされ、そのCAGリピートの異常伸長が報告されました。1995年Yazawaらは DRPLAの原因遺伝子産物(DRPLA蛋白)を同定し、患者脳組織で異常DRPLA蛋白を示し中枢神経系の分布を明らかにしました(Yazawa et al, Nat Genet 1995)。DRPLA蛋白はCAGリピートと電気泳動移動度とに相関関係を認め、DRPLA蛋白は伸長ポリグルタミンをもつ蛋白として翻訳され、発病に関与します。1997年英国でハンチントン病(HD)のTGマウスが作成され、神経細胞の核内に異常封入体が出現し、ポリグルタミンを含む遺伝子産物が異常な蛋白凝集を起こすことが報告され、HD患者脳組織でも核内封入体は確認されました。今後バイオリソース研究室では、このような封入体形成は神経変性に直接影響するのか、それとも神経維持保護の作用に働いているのかを明らかにしたいと考えます。
ポリグルタミン病における神経変性の仮説

機序別

ヒトの脳神経細胞の変性に関する研究(ヒトの脳組織の解析法に関する研究)

 バイオリソース研究室の基本的戦略は、神経変性の分子病理のメカニズムを詳細に検討し、その過程で治療に応用可能な最も現実的な方法を開発することです。トランスジェニックマウスを詳細に検討するのと同時に、患者脳組織を解析します。ヒト脳組織の直接の解析は、ルネッサンス時代からの困難なテーマです。その理由の第一は、ヒトの脳は死後急速に蛋白や酵素が壊れます。第二に、神経変性疾患の患者脳組織では患者が亡くなる時期には、脳神経細胞はほぼ消失している場合が多く、初期の発病の変化を捉えるには、適した実験検体ではありませんでした。しかし、ヒト脳組織の直接の解析方法は神経変性メカニズムの総合的な理解には重要であり、特に今日の治療を前提とした神経変性メカニズムの解析には不可欠で、その意義も大きいと考えます。したがってバイオリソース研究室では、 形態の観察による組織学的検討法やイムノブロットを中心とした生化学的方法などの従来の解析方法に加えて、新たなヒト脳組織の解析方法の開発が重要なテーマです。

神経細胞―オリゴデンドロサイト間の細胞間相互関連の研究

 今日多くの神経変性疾患における神経変性は、神経細胞変性が単独で起こると考えるより、他の細胞成分が神経細胞の変性に関わると考えることが重要です。具体的には神経細胞以外の脳構成細胞であるastrocyteやオリゴデンドロサイト、microgliaが、神経細胞の変性に深く関与する可能性が強いと考えます。最近Yazawaらは、ヒトα-synucleinをオリゴデンドロサイトに強制発現するトランスジェニックマウス(CNP-synTGマウス)を作成し、マウスにおこる神経変性がMSAの神経病理に極めて類似することを示しました。MSA動物モデルであるCNP-synTGマウスではα-synucleinを介して、神経細胞の変性にはオリゴデンドロサイトが重要な役割を演じることを示しました。神経細胞とオリゴデンドロサイトの直接の相互関係を解析し、CNP-synTGマウスにおける神経変性のメカニズムを明らかにします。

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研究業績

2015

Jin C, Washimi Y, Yoshida K, Hashizume Y, and Yazawa I.

Characterization of spheroids in hereditary diffuse leukoencephalopathy with axonal spheroids.

Journal of the Neurological Sciences, 352, 74-78, 2015

 

2014

Suzuki Y, Jin C, Iwase T, and Yazawa I.

β-III Tubulin fragments inhibit α-synuclein accumulation in models of multiple system atrophy.

Journal of Biological Chemistry, 289, 24374–24382, 2014.

Suzuki Y, Jin C, and Yazawa I.

Cystatin C triggers neuronal degeneration in a model of multiple system atrophy.

The American Journal of Pathology, 184, 790-799, 2014.

Kinoshita M, Kondo Y, Yoshida K, Fukushima K, Hoshi K, Ishizawa K, Araki N, Yazawa I, Washimi Y, Saitoh B, Kira J, and Ikeda S.

Corpus callosum atrophy in hereditary diffuse leukoencephalopathy with neuroaxonal spheroids: an MRI-based study.

Internal Medicine, 53, 21-27, 2014.

Yazawa I, Suzuki Y.

α-Synuclein accumulation in Parkinson's disease and multiple system atrophy. (Polizzi M and Kanowitz HC, eds.,) α-Synuclein Functional Mechanisms, Structure and Role in Parkinson's Disease.

Nova Science Publishers, Hauppauge, NY, USA, 2014, pp.1-28.
 

2013

Suzuki Y, Jin C, and Yazawa I.

Increased aggregation of polyleucine compared with that of polyglutamine in dentatorubral-pallidoluysian atrophy protein.

Neuroscience Letters, 552, 156-161, 2013.
 

2012

Nakayama K, Suzuki Y, and Yazawa I.

Binding of neuronal α-synuclein to β-III tubulin and accumulation in a model of multiple system atrophy.

Biochemical and Biophysical Research Communications, 417, 1170-1175, 2012.

Ito H, Nakayama K, Jin C, Suzuki Y, and Yazawa I.

α-Synuclein accumulation reduces GABAergic inhibitory transmission in a model of multiple system atrophy.

Biochemical and Biophysical Research Communications, 428, 348-353, 2012.

Yazawa I.

Perspectives on therapeutic target for multiple system atrophy.

Recent Patents on Regenerative Medicine, 2, 30-36, 2012.

Yazawa I.

Tubulin: Structure, Function, and Role in Disease. (Yamauchi W and Sokic A, eds.,) Tubulin: Structure, Functions, and Roles in Disease.

Nova Science Publishers, Hauppauge, NY, USA, 2012, pp.85-100.

 

2011

Suzuki Y and Yazawa I.

Pathological accumulation of atrophin-1 in dentatorubralpallidoluysian atrophy.

International Journal of Clinical and Experimental Pathology, 4, 378-384, 2011.

 

2010

Suzuki Y, Nakayama K, Hashimoto N, and Yazawa I.

Proteolytic processing regulates pathological accumulation in dentatorubral-pallidoluysian atrophy.

FEBS Journal, 277, 4873-4887, 2010.

 

2009

Nakayama K, Suzuki Y, and Yazawa I.

Microtubule depolymerization suppresses α-synuclein accumulation in a mouse of multiple system atrophy.

The American Journal of Pathology, 174, 1471-1480, 2009.

Hazeki-Taylor N, Yazawa I, and Kanazawa I.

Perspectives on the therapeutic targets for Huntington's disease in view of the structural and biochemical properties of polyglutamine aggregates.

International Journal of Medical and Biological Frontiers, 15, 337-355, 2009.


主な過去の論文

2006

Uryu K, Richter-Landberg C, Welch W, Sun E, Goldbaum O, Norris EH, Pham CT, Yazawa I, Hilburger K, Giasson BI, Bonini N, Lee VMY and Trojanowski JQ.

Convergence of Hsp90 with ubiquitin in filamentous alpha-synuclein inclusions of alpha-synucleinopathy. Am J Pathol 168, 947-961, 2006


2005

Yazawa I, Giasson BI, Sasaki R, Zhang B, Joyce S, Uryu K, Trojanowski JQ and Lee VMY.

Mouse model of multiple system atrophy: alpha-synuclein expression in oligodendrocytes causes glial and neuronal degeneration. Neuron 45, 847-859


2000

Yazawa I.

Aberrant phosphorylation of dentatorubral-pallidoluysian atrophy (DRPLA) protein complex in brain tissue. Biochem J 351, 587-591

 

1995

Yazawa I, Nukina N, Hashida H, Goto J, Yamada M and Kanazawa I.

Abnormal gene product identified in hereditary dentatorubral-pallidoluysian atrophy (DRPLA) brain. Nat Genet 10, 99-103, 1995.

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スタッフ紹介

  • 室 長 矢澤 生 Ikuru Yazawa, MD, PhD
  • 特任研究員 金 成花 Chenghua Jin, MD, PhD
  • 流動研究員 佐々木 飛翔 Asuka Sasaki, PhD
  • 客員研究員 岩瀬 環 Tamaki Iwase, MD, PhD
  • 研究生 中山 貴美子 Kimiko Nakayama, PhD
これまでの在籍者
  • 中山 貴美子(2005〜2010)
  • 鈴木 康予(2005〜2014)
  • 伊藤 浩志(2010〜2012)
  • 都竹 佳子(2006〜2014)

バイオリソース研究室 室長

矢澤 生 MD, PhD

関心のある研究分野とキーワード

病理解剖; 神経病理診断; 生化学・遺伝学的研究; 神経変性; 認知症; 疾患モデル(動物・細胞); α-synuclein; ポリグルタミン; 白質変性症

主な過去の論文

2005
Yazawa I, Giasson BI, Sasaki R, Zhang B, Joyce S, Uryu K, Trojanowski JQ and Lee VMY. Mouse model of multiple system atrophy: α-synuclein expression in oligodendrocytes causes glial and neuronal degeneration. Neuron 45, 847-859

2000
Yazawa I. Aberrant phosphorylation of dentatorubral-pallidoluysian atrophy (DRPLA) protein complex in brain tissue. Biochem J 351, 587-591

1995
Yazawa I, Nukina N, Hashida H, Goto J, Yamada M and Kanazawa I. Abnormal gene product identified in hereditary dentatorubral-pallidoluysian atrophy (DRPLA) brain. Nat Genet 10, 99-103.

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ご案内

 バイオリソース研究室では神経変性の研究を進める若い力を求めています。大学生、大学院生、ポスドク、医師などの方で、興味のある方はいつでもご相談ください。研究室の見学だけでも歓迎いたします。

 神経変性疾患の病気についてご相談されたい方はメールにてお願いいたします。われわれがわかる範囲でお答えいたします。

共同研究

  • CNDR, University of Pennsylvania School of Medicine (Drs. Virginia MY Lee and John Q Trojanowski) (2005-)
  • Ono Pharmaceutical Co. Ltd. (2014-)
  • 福祉村病院神経病理研究所

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連絡先

連絡先:矢澤生
メール:yazawaik (at) ncgg.go.jp

〒474-8522 愛知県大府市森岡町7-430
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
バイオリソース研究室

電話:0562-46-2311 内線:5953
FAX:0562-46-8319

研究室の窓からの風景

「研究室の窓から」 by K. Nakayama

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病理解剖組織バイオリソース

1.病理解剖組織バイオリソースとは?

 病気で亡くなられた方の脳などの組織を、病気の研究に利用するために保存するバイオリソースです。欧米ではブレインバンクの重要性がよく知られ、大きな研究成果をあげています。
ヒトの組織はどのようにして保存されるのでしょう?

病理解剖を行って、組織を採取し保存します。

何故、ヒトの組織が必要なのでしょう?

ヒトの病気は、ヒトの脳に起こることから、他の動物では研究しにくいからです。

国立長寿医療研究センター病理解剖例

アルツハイマー病
レビー小体型認知症(DLB)
前頭側頭葉変性症(FTLD)
白質ジストロフィー症
脳梗塞  など

2.バイオリソース研究室からのメッセージ

 全ての人は亡くなります。アルツハイマー病のような脳の疾患で亡くなる方も多くいます。原因がわからない病気の治療法を見つけるのはとても困難です。病気の原因を明らかにするために、ヒトの脳などの組織が必要です。組織提供のご協力は新しい治療法の開発に直接つながっています。

 次に病気になる人のためにできることは何か、お考えいただければ幸いです。

朝顔の花

 

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国立長寿医療研究センター

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