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No.1 老化や老年病の予防を目指して

 「老化(=老いること)」とは、どのような現象なのでしょうか。「白髪になる」、「しわが増える」、「腰が曲がる」などの外見的な変化は目につきやすいですし、ご本人も気にされることが多いかと思われます。またそれ以外にも、「耳が遠くなる」、「物忘れがひどくなる」、「体力が落ちる」、「やる気がなくなる」など、心身のいろいろな面での変化も高齢になるにつれておこってくることがあります。しかし、実際に歳を重ねるとどのような変化がおきるのか-例えば、どのように足腰が弱っていくのか、どのように食事の量や内容は変わっていくのか、どのようにこころの状態は変化してくのか-といった非常に基本的な情報は、これまで十分に明らかにされてきませんでした。

 

 また(みなさまも同窓会などで実感されることがあるのではないかと思いますが)、「同じ年齢」であっても、誰もが同じように体力が低下し、記憶力が衰え、元気ではなくなる、というわけではありません。「昔以上に健康に毎日を過ごしている方」や「歳とともにますます活躍の場を広げている方」もいらっしゃる反面、「先生かと間違われるほど老けた方」や、そもそも同窓会自体に参加できないほど「気力・体力的に衰えた方」もいらっしゃることでしょう。このような個人差はどこからくるのか、ということについても、これまで十分に明らかにされてきませんでした。

 

 「人生八十年」と言われるほど長生きが一般的になってきた現在の我が国では、どのようにすればより長生きできるのかということももちろん重要ですが、より生き生きとした老後を過ごすということも重要です。つまり、健康長寿はどうしたら実現できるのかを知り、それを実践していくことが求められています。すなわち一般的な「老化」がどのように進むのかを明らかにすることや、どのような人では特に「老化」が速いペースで進むのか、あるいはどのような方がより生き生きはつらつとした老後を過ごしているのかを明らかにする研究が必要です。そのために、年を重ねるにつれどのような変化がおこるのかということについて、たくさんの人に、何年にもわたって繰り返し調査を行い、実際の心身のいろいろな側面での変化を記録していくことが必要となるのです。

 

「NILS-LSA(ニルス・エルエスエー)」とは

 人間の「老化」は何年もかけてゆっくりと進むため、「老化」や「加齢」に伴う変化を記録するためには、長期間にわたる研究を行うことが必要となります。国立長寿医療研究センターでは、一般的な老化の進み方を明らかにすることや、高齢者に多い病気(『老年病』といいます)の予防を目的とした「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究:NILS-LSA」を平成9年に開始いたしまして、平成27年現在もこの調査は続いています。

 

調査対象の方々

 NILS-LSAは、当センターがある愛知県大府市および隣接の知多郡東浦町のご協力のもとに、これらの地域にお住まいの40~79歳の方を参加者として選び出し、原則としてその方々に2年に1回のペースで、繰り返し調査に参加していただいています(ちなみに、参加者の候補者を選ぶ際には、なるべく偏りなくいろいろな方に調査に参加していただくために、『40歳代男性』や『70歳代女性』のような条件だけを決めて、それに合う方をそれぞれの地域の住民基本台帳から『くじ引き』のような形式で選び出しています)。平成9年に第1次調査を開始いたしまして、これまでに7回の調査が完了しています(図)。先ほど書きましたとおり、原則としては同じ方々に繰り返し調査に参加していただいているのですが、中には例えば「他の地域への引っ越し」などの理由から、途中から調査に参加することができなくなったという方もいらっしゃいます。その場合は、その方と同年代・同性の方をまた新たに選び出して、調査に参加していただく…という形式で、第2次調査から第7次調査にかけては参加者の補充も行ってきました。このようにして、これまでの7回の調査では、下は40歳、上は91歳という幅広い年齢の方々に、毎回約2,300名、全調査を合わせるとのべ3,983名の方に調査に参加していただきました。

 

調査の内容

 第1次調査から第7次調査では、身体の健康状態に関する調査、普段の生活習慣の調査、体力測定、心理調査、食事調査など、いろいろな調査を行ってまいりました(このように書くと一見簡単な調査に見えますが、実際には①事前にお送りして書いてきていただく分厚い調査票2冊、②調査当日には朝9時から午後3時~4時頃まで1日かけて心身のいろいろな機能の測定・検査・調査、③後日、3日間の食事内容を全て記録・写真撮影していただく栄養調査、および7日間万歩計のような機器を身につけて運動量などを記録する調査…といった、多大なる時間と労力を参加者ひとりひとりの方に提供していただいて調査が成立しています。参加者のみなさまには、改めて感謝申し上げます。)。また、平成25年からは、第1次調査に参加してくださった方の現在の健康調査を把握する郵送調査や、第7次調査までに参加してくださった方々を対象としたコンパクトな「脳とこころの健康調査」も実施しています。

 


平成9年に始まった第1次調査以降、約2年毎に同じ人を対象に老化・老年病に
関する詳細な調査を行い、平成25年以降には追跡調査を実施しています。

 

すこやかな高齢期をめざして

 NILS-LSAでは、平成9年に調査を開始してから、書籍や論文、国内外での学会報告などこれまでに数多くの成果発表を行ってまいりました。そして、我々は、現在も、NILS-LSAで得られた貴重なデータを基礎として、日本人の健康長寿を目指す研究を日々行っています。これらの成果の一部は、国が決める政策や基本方針で重要な鍵を握る基礎的なデータとして活用されており、NILS-LSA参加者のみなさまの多大なるご協力が、我が国の公衆衛生(日本人全体としての健康を守ること、およびそのための活動)に大きく役立っています。また、機会としては少数ですが、新聞やテレビ番組の中で研究成果の一部が紹介されたり、あるいは我々が「講演会」や「市民公開講座」のようなところでお話をさせていただくこともございます。 この「すこやかな高齢期をめざして」のコラムも、みなさまの健康長寿のために少しでも役立てていただけることを期待しています。

 

平成27年4月8日
NILS-LSA活用研究室スタッフ一同

 

 

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